永遠の少年
親愛なる貴方へ
この手紙を貴方が読むことはありません。
だって、これは私の机の引き出しにずっとしまっておくつもりですから。
私は貴方への手紙を書くことで、貴方を大切な思い出として残しておくことに決めました。
真実は、時に残酷です。
私は今まで貴方の帰りをずっと待っていました。そう、これからもずっと……。
けれど、時間は待ってくれません。
私はもうすぐ、お見合いをします。大きな農場を経営する社長の息子さんだそうです。彼は以前から私に好意を持って下さっていたそうです。とても優しそうな方でした。私はそのお話を受けることにしました。
でも、貴方はきっと許してはくれないでしょうね。
本当は不安で仕様がありません。こんな時、貴方が側にいてくれたらなら、と何度も考えたものです。
貴方は知らなかったでしょう。私にとって貴方の存在はこんなにも大きなものだったなんて。
貴方の心にはいつも大きな夢で占められていましたから、無理もありません。
貴方がその夢を語る時、その瞳はキラキラと輝いていました。大人になっても、それは変わることはありませんでした。
だから、貴方はこの土地を離れて旅立ってしまいましたね。
ここより素晴らしい世界を見つけることが出来ましたか? それだけでも知りたいです。
叶わぬことだとわかっています。けれど、貴方に会いたい。会って話したいことが沢山あるのです。この便箋にはとても書ききれないくらいに。
貴方の話が聴きたい。貴方の声を。
貴方のその少年のような澄んだ瞳をもう一度見たいのです。
……正直に言います。
私はもう、貴方を待ち続ける勇気がなくなっただけなのです。
もう、限界です。毎日、貴方を想い、貴方の夢を見ては泣き崩れる生活に耐えられなくなったのです。お見合いの話もそうです。淋しい時に側にいてくれる相手が欲しいだけなのです。まるで他人を利用しているようで、少し心苦しい気もしますが。こんな気持ちで結婚を決める私を、貴方は理解できないことと思います。
そして、貴方は私を許してはくれないでしょうね。
約束を破ってしまって、ご免なさい。
あの日、あの時誓った言葉に偽りはありません。ですが、すでに私は、あの頃の私ではないのです。
貴方がいつ帰ってきても大丈夫なように、部屋はそのままにしてあります。時々、掃除もしてありますから安心してください。
あの部屋は何一つ変わっていません。季節がどんなに変化をしても、貴方の部屋だけはずっと同じです。
きっと、貴方もあの部屋と同じように、今もあの頃と変わっていない、そう信じています。それだけが私にとっての唯一の救いなのです。
自分勝手な言い分ばかりですね。本当にご免なさい。
けれど、貴方に蔑まれるくらいなら死んだ方がましです。
私はこれから毎日、教会に通うつもりです。貴方への懺悔が神を通じて、貴方に届くことを願って。
最後に、この先どんなことがあっても、私は貴方を忘れたりはしません。
信じて下さい。
貴方がどこにいて、どんな姿になろうとも構いません。
私の中で貴方は「永遠の少年」なのだから……。
永遠の少年へ
幼馴染みより
